当時の症状はとにかく酷いものでした。毎日寝起きを共にしている家族からでさえ「そのうちに慣れてしまうという範囲を超えている状態」だとよく云われていました。事情を知らない人と旅に出る時等は事前に話しをしますが、遠慮もあってか口を揃えるように「家族にもいるので慣れているから大丈夫」と云ってくれますが、単なる「イビキ」と違っていることを説明しても実際に接してみないと理解できないようでした。大概は旅行先で朝目覚めると部屋には私一人で昨夜一緒の部屋に泊まった筈の同宿者の姿は見えないことが殆どでした。大きな温泉旅館等であれば24時間営業なので風呂に入ったりするなど休憩や仮眠する場所もあって何とかなるようですが、ホテルや小さな旅館では朝までの長い時間を過ごす場所が無く困ってしまうようでした。朝食の時には明らかに「あきれ顔」をしている見るからに眠そうな同宿者に謝りますが、必ず「とても信じられない・・・何事が起こったのか・・・?」と云われてしまうことが大半でした。あるとき社員旅行で割り振られた部屋に10人ほどで宿泊した翌朝、目覚めると皆の声は聴こえるんですが真っ暗闇の中で布団に入っているようなので「可笑しいな?」と思い「おーい!」と声をかけると入り口が開いて明るい光線が入って眩しさの向こうから「保科さ~ん・・・おッはよ~う」と合唱されてしまいました。何が起こったのかというと、昨夜のあまりの煩さに皆で布団ごと引きずって押し入れに運び入れたそうで「重かったよー!」、「何キロあるの??」、「布団蒸しにする訳にもいかないし・・・」誰一人眠ることが出来ずに困った末の実力行使だったそうです。以前謝りながら状況を聞いたことがことが有りましたが、詳しく話しを聞くと・・・寝付きがとても早くて「おやすみ」と言ってから暫くするとイビキが始まるらしいんですが、30分もしないうちに大きなイビキを繰り返した後に突然イビキが止まるらしいんです。一瞬静かになって「これで私も眠れる」と思うらしいんですが、数回繰り返すうちに私の呼吸が止まっていることに気づいてからは「翌朝まで一睡も出来ず・・・」心配で眠れなくなってしまうそうです。以前いた会社の社員旅行では私一人小部屋を手配してもらっていましたが「一人ではつまらないでしょうから俺が付き合います」という若い社員が現れた時、私の方でも気を使ってしまい夜中まで何度も風呂に誘ったり遊技場にいったりで時間を潰しましたが、結局はいつもより酷いイビキと呼吸停止を体験させてしまい「生きた心地がしなかった」と翌朝皆の前で報告されてしまったことがありました。

 元々は72~3Kg程度の体重時から症状が出始めていて、体重が増えるとともに重症化したようです。1度目のダイエットに挑戦する前が80Kgでしたが、リバウンド後は82Kgになり、2度目のリバウンド後はさらに92Kgとなっても生活自体を改めようとは考えずにいました。99Kgに体重が増加した時には「このままでは・・・」と考えるようにはなりましたが、一応ダイエットを6ヶ月続けて94Kgまでは減らすことが出来ました。当時は仕事中心で生活リズムを作っていましたので「食事」と「酒を飲む」ことが半分仕事になっていた環境もあって、ちょっとの間に3度目のリバウンド現象が起こって102Kgとなってしまいました。その後は体重計に載るのは年に5回ほど仕事で行く旅行先で、大浴場に設置されているあの大きな体重計に載る時だけになってしまいました。宴会の終了後(暴飲暴食後)にこの体重計に載ると110Kg付近を針が振れますがまだ針が静止する前におりてしまうことが多く、正確な数字を自分自身知りたがっていませんでした。当然のようにこの頃は家庭用のヘルスメーターでは計測することは無くなっていました。100Kg超の5年間程は高血圧と高脂血漿、通風で通院していた総合病院の担当医からも「いつ倒れてもおかしくない身体ですよ!」、「明朝には冷たくなっていても不思議じゃありませんよ!」と診察の度に言われ続けていたが、まじめに出された薬さえ飲んでいれば大丈夫だと勝手に思い込んでいたので、生活を変えること等まったく考えもせずにいた。この5年間に運良く倒れなかったことで現在がある訳ですが、今になって思うことは自分自身の身体をこれほどまでにいじめ続けてしまったことが、過去のツケを背負っていくこととは・・・体力の低下とともに今後現れるであろう新たな病気を避けて通る訳には行かないであろうことを・・・。

 会社を辞めて約1年間で生活リズムを変える準備が整い肉体労働の仕事を中心に探した。やっとのことで就職した会社の仕事内容は丁度良い条件だったが、中年の新人では昼食や時折誘いのある飲み会を断れないことや自分自身の生活を改善する方向等も決めかねていたことで、ずるずると過去の食生活に近い状態を続けてしまった。しかし、毎日の仕事でたっぷりと汗をかくことができて更には家での晩酌量が減ったことだけでも効果が出始めて3桁の体重とはおさらばすることが出来た。しばらくして内勤から配送業務へ替わり一人での行動が出来るようになり、昼はコンビニの「ざるそば」だけに減らすことが出来てからは効果が現れて、6ヶ月後は90Kg前半で安定するようになっていました。この頃も依然として「睡眠時無呼吸症候群」の状態は続いていましたが、イビキ自体は多少小さくなったようでした。その後会社の状況が急変して組織改革の影響で職が無くなりかけていた時に父親が倒れて、入退院を繰り返し始めました。会社と自己の都合が一致して会社を辞めて暫くすると、父親が一日の大半を寝て過ごすような状態が、約1年6ヶ月続きました。この状況下のお陰で一切の友人や知人とのお付き合い等を辞めたことで、全ての生活を父親と私の2人だけのことを考えたものに変更することが出来ました。この生活が約5年間経過した頃に父親が「おまえのイビキが無くなったヨ!」と突然言い出しました。この頃は外での飲食は勿論、お茶の一杯でさえも家を出たらば何も口にはしないで済む範囲以内のお付き合いしかしていませんでした。家での飲食は病人の父親と同じものを同じ量だけ摂るだけ、朝起きるのも寝るのも同じ時間という生活を続けていました。この時は「おまえのイビキはただ者ではなかったからなあ?ッ」、「あんな雷みたいなものが突然静かになると生きているのか心配で時々夜中に確認に行くんだヨ」と病人に言われてしまう始末であった。この生活を10年間続けたお陰で「いつ倒れても可笑しくない状態」といわれていた頃の「24時間眠気が襲い続けていた」状態が、今では不思議なくらいの快眠で布団の中にいる時間が6時間、実睡眠としては5時間程度になりました。起きている時間に眠気が襲うこともありませんし、夜中に突然目が覚めるということも無くなりました。生活習慣病を克服するには一般の常識の範囲で解決しようとしても到底無理なところを目指すぐらいの決断が必要になります。私の場合は偶然に身近の環境異変に巻き込まれたお陰で「結果として」よい方向に向かうことが出来ただけのものですが、この期間に失ったものも大きかったことは事実です。